相続レポート
REPORT
ペットに遺産を残す方法
2014.05.20
はじめに
近年、愛犬などのペットを長年可愛がって、家族と同等に大切な存在と考える人が増えています。
自分に「もしも」のことがあったときのために、ペットに遺産を遺したいと考える人も少なくないと思います。また、家族がいない方やお一人住まいで近くに頼れる方がいない場合等、自分の財産をペットに有効活用するにはどのようにしたら良いか心配される方も多いと思います。
日本では、法律上は、ペットは「物」扱いとされてしまいます。したがって、日本の民法では、「人」ではないペットに遺産を相続させることはできません。仮に、ペットに財産の全部または一部を相続させるというような遺言を作成していたとしても、その遺言は法律上の効果を生じません。
しかし、相続人や信頼できる知人に、ペットの面倒をみてもらうことを条件に財産を譲ることは可能です。その方法として、以下の3つの方法があります。
①負担付遺贈
財産を遺贈する代わりにペットの面倒をみてもらいたいという内容の遺言を残す方法です(民法1002条)。 「ペットの世話をお願いします」だけでは、受遺者(遺産をもらって、ペットの面倒をみてくれる人)は何をどのようにすべきかわからないので、食事の回数や種類、散歩の回数、予防接種、トリミング等について具体的に指示をしておくことが大切です。
ただし、注意点として遺言は遺言者の一方的意思表示であり、負担付遺贈の受遺者は必ず負担付遺贈を受け入れなければならないわけではなく、「ペットの面倒はみられないから、財産はいらない」というように、負担付遺言を拒否することもできます。ですから、遺言をする人は、受遺者がペットの面倒をみてくれるのかどうかについて、しっかり事前に意思確認をしたうえで、遺言を作成する必要があります。
また、遺言書に指定された人が贈与された金銭だけを受け取り、遺言書の内容通りにペットの面倒をみてくれないかもしれません。そのため、受遺者が、ペットの面倒をみてくれるように、遺言執行者を遺言で指定し、遺言執行者により受遺者がペットの面倒をみているかどうかをチェックさせるようにしておくことが大切です(民法1006条)。
②負担付死因贈与
身内や第三者など世話をしていただく方との間で、もし自分が死んだら、ペットの面倒をみてもらう代わりに財産を贈与するという契約をする方法です(民法553条、554条)。
死因贈与は、委託者(ペットに遺産を遺す飼い主)の死亡によって効力を生ずる贈与です。負担付死因贈与は相手方との契約なので双方でよく話し合い、ペットの世話をする方法について納得のいく内容を取り決めることができます。双方の合意があって初めて成り立つものですから、相手の承諾が得られるなら遺言よりも確実なものといえるでしょう。
この場合、合意内容について書面にしておくことが重要です。また、負担付死因贈与は、双方の合意に基づく「契約」なので、原則として取消し・一方的な破棄はできません。
負担付死因贈与契約の場合も、本人の死後、受贈者がお金だけもらって飼い主の期待に沿うペットの面倒を見てくれないという危険はありますので、執行者を負担付死因贈与契約に明記して、ペットの飼育がおこなわれているかどうか、信頼できる執行者にチェックしてもらうようにすることを検討すべきと考えます。
③遺言信託
自分の死後、自分の遺産をペットに活用する方法として、信託制度を利用するという方法も考えられます。信託制度とは、他者のために、財産を預かり、一定の目的に沿って管理・運用・処分することで、委託者(ペットに遺産を残したいと考える飼い主)が受託者(信託銀行など)に自分の代わりに財産を預け、ペットのために遺産を管理・運用・処分してもらう制度です(信託法)。
実際に、受託者である信託銀行等が世話をするわけではなく、通常は遺言の中でペットの面倒をみてもらう人(受益者である世話人)を指定しておきます。指定を受けた世話人は、信託銀行等からペットのエサ代等飼育に関する費用や報酬を定期的にもらうことで、ペットの世話を確実にさせる方法です。
最後に
日本においては、欧米に比べて、ペットのために自分の遺産を活用する遺言などの利用がまだまだ普及していませんが、これからこのような自分の遺産をペットに活用するための遺言などの利用が増えてくと思われます。
その際には、自分の死後も、愛するペットのために自分の遺産を活用できるように、事前に十分専門家のアドバイスを受けたうえで、遺言などを作成することをお勧めいたします。
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